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本当にヨーロッパ城のような邸宅だった。他を圧するがごとき、豪勢で華やかだ。
来場者はむろん、華族の人ばかりだ。紳士服とドレスの奥様や、令嬢、紋付き袴や振袖姿の女性の姿もお見掛けした。おそらく同じ女学校の生徒さんもいらっしゃるだろう。庭の小さな小径を歩き、洋館のほうへ足を踏み入れた。豪華なシャンデリアが、天井を着飾っている。ステンドガラスの大きなアーチ窓、深紅の絨毯。人々のざわめき合う声。華やかな空間がそこにあった。
「むね子様のお宅ってこんなに素敵だったのね」
絶句する私を見て、母はため息をついた。
「そうよ。貴女は仲良くないから、お招きいただいたことはなかったかもしれないわね」 少々ムッとしながらも、反論出来ない。そう。私達は仲は良くない。遊びに行くことなどなかった。というか、むね子嬢に誘われた令嬢などいるのだろうか。あまり皆に好かれていなかったが。
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