82人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は口にめいいっぱい食べ物を含んでおり、どうでも良いと言った感じで私のほうを一瞥した。
「私がお呼びしたのよ!」
むね子嬢がツンと澄ましてそう言った。
「そうなの? 何故」
私が問う。伊沙子嬢も慌ててこちらへやってきた。問うまでもなく、何となく分かる。勝手に一目惚れした中田さんに、どうしても自分の結婚を止めて欲しいという魂胆だ。全く開いた口が塞がらない。恋人同士ならまだしも。全く関係のない相手だというのに。
「僕に結婚を止めて欲しいそうです」
中田さんは、コロッケが好物のようだ。いくつものコロッケを皿に盛り付け、豪華に頬張る。
「中田さん、もう少しお上品にお食べになったほうがいいわよ」
私はこっそり告げた。そうは言っても、ここは貴族や華族の集まりの場。ガツガツ頬張っていては目立つ。口の悪い方も結構いらっしゃる。あの下品な方は誰だと目をつけられても困るのだ。
最初のコメントを投稿しよう!