むね子嬢の婚約パーティ

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 彼は口にめいいっぱい食べ物を含んでおり、どうでも良いと言った感じで私のほうを一瞥した。 「私がお呼びしたのよ!」  むね子嬢がツンと澄ましてそう言った。 「そうなの? 何故」  私が問う。伊沙子嬢も慌ててこちらへやってきた。問うまでもなく、何となく分かる。勝手に一目惚れした中田さんに、どうしても自分の結婚を止めて欲しいという魂胆だ。全く開いた口が塞がらない。恋人同士ならまだしも。全く関係のない相手だというのに。 「僕に結婚を止めて欲しいそうです」  中田さんは、コロッケが好物のようだ。いくつものコロッケを皿に盛り付け、豪華に頬張る。 「中田さん、もう少しお上品にお食べになったほうがいいわよ」  私はこっそり告げた。そうは言っても、ここは貴族や華族の集まりの場。ガツガツ頬張っていては目立つ。口の悪い方も結構いらっしゃる。あの下品な方は誰だと目をつけられても困るのだ。
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