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「お姫様。貴女は色々分かっていない。私なんかと一緒になっても苦労するだけです。庶民になるとお付きの者もいません。買い物も一人でいきます。お料理も自分でしなければなりません。お金のやりくりも。華族の方のように我々は稼げませんからね。そんな生活、侯爵令嬢の姫君である貴女が出来る訳がない」
自分が言われたように感じた。本当に正論で私は俯き、ギュッとドレスを掴み、唇を結んだ。
「それに、私なんかを選んだら、大スキャンダルになります。全国で大騒ぎになるでしょう。柳原百蓮様のように。それは避けたいですね」
白蓮様を例に持ち出すあたりは、私と同じだった。中田さんは、むね子様を好きではない。断る口実のために、柳原百蓮様の例を持ち出したのだ。
「そうよ、ご冷静になって」
私もむね子嬢を説得させようとした。無駄かもしれないと思いつつ。むね子嬢はしょぼんとした顔を見せた。学校ではいつも高飛車だった。そんな落ち込んだ顔を見るのは初めてなのでそれは少し驚愕したが、そのことについては触れない。
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