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「フラれたわ」
口を尖らせる彼女。私は彼女を説得するように告げる。
「当たり前よ。言ったでしょう。彼には心に決めた人がいるのよ。まぁ、あれだけ口が悪いと彼のほうがフラれるでしょうけど、それも時間の問題かもしれないわね」
むね子嬢は今までこんな屈辱を味わったことはないだろう。あれだけ無遠慮にものを言う殿方も私もどうかと、思った。
「それに今日はなんといっても、貴女のおめでたい婚約発表の夜会なのよ。旦那様になる方にも失礼よ」
柔らかく、窘めるように私は言った。むね子嬢は腑に落ちない顔をして俯いたまま。一体相手がどんな人なのか気になった。
「そんなにお相手がお嫌なの?」
伊沙子嬢も、クリームコロッケに釣られたのか、お皿に一つ取り上品に口元まで運ぶ。むね子嬢は口を尖らせた。
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