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下部告発?
しかし、実が考えた雨を利用した化粧品もすぐに告発された。実の下でかろうじて生き延びていたハコベ、ナズナ、ハルジオン、タンポポが雨不足で枯れそうになった。実を伝った雨を瓶に詰めて売り捌いている、あの木のせいだ。
木に比べると自然界の弱者である地味な草達は、木の悪行を週刊自然界に情報提供した。花が逮捕されても懲りずに植物派閥を組む木を自然界の民は糾弾した。動物、鳥、昆虫、空、雲、土、海、川。ありとあらゆる者から木は嫌
悪された。風がみんなの声を運ぶ。
「植物派閥解散では足りない、伐採だ!」
「花だけでなく、実、枝、葉、根、全員悪人」
「お天道様、まとめてしょっぴいてください」
日の光はその声を聞き入れ、その木は宙に浮くように無造作に引き抜かれた。呻き声が聞こえた気がした、断末魔のような不気味な悲鳴。
驚いて地中海から飛び出したもぐらとねずみのおばちゃん同士が顔を見合わせた。
「ありゃま。空転して捨てられたよ、木が」
「空転するのは自然界国会もだけどね」
もぐらとねずみのおばちゃんはその木の『本当の』名前すら知らなかった。花、実、枝、根、実。まだ寒い二、月酸素キックバック五人衆が逮捕された瞬間だった。
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