植物派閥分裂?

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植物派閥分裂?

 「花の奴さあ、風雪の中を支えるこっちの身にもなれって。アイツは支えられて同然と思ってやがる」 枝が愚痴ると葉も続く。 「そうそうあいつのせいでいつも脇役。フラワーアレンジメントなんか、ハサミでチョキン。すぐ俺はクビを切られる」 穏やかな根がぶるぶると震えて口を挟む。 「もっと早く水持ってきて、お肌が乾燥すると僕にはパワハラ三昧」 葉もゆらゆらと揺れて頷く。 「光合成した酸素のキックバックも、人間用のスポーツ酸素スプレーとしてメロカリで売ってたのに。花の奴、派手にやり過ぎてお天道様にしょっぴかれてやんの」 実がヘタにマスカラを塗り直してつぶやく。 「ねえ、週刊自然界で『酸素のキックバック五人衆、派閥トップ花逮捕。枝、葉、根、実4人へも脈々と伝わる裏空気!自然界の恵みへの冒涜は許し難い』だって。もう私達解散しない?花が傲り高ぶるから捕まるのよ」 葉が脈々に反応する。 「俺、葉脈キレそう、解散に賛成。もう花にこき使われるのはゴリゴリ。光合成で一番頑張ってるのは俺なのに」 枝も乾いた笑いを浮かべる。 「俺も賛成だ。担ぐのには軽い花の方が楽だが、アイツは体重、いや花重が重い癖に頭の中身は薄っぺらい、ペラペラの花びら」 実は化粧直しを済ませてほくそ笑む。 「次のトップは私かしらね。解散しても次の植物総選挙が終わったらまた集まればいいのよ」 唯一、根だけが反対した。 「花の今までの横暴は許せない。でも形だけ派閥を解散しても有権者の目は誤魔化せない」 根は花から耐え難いパワハラを受けていた割には冷静だ。実は根にゆったり話しかける。 「『このヒョロガリヒゲー!水寄越せ!水!』花からあれだけ酷いパワハラ受けたのにどうして派閥にこだわるの?」 「僕達は一人じゃ何も出来ないから。花がいないなら四人の誰かが派閥の長をやり酸素のキックバックを止めるしかない。選挙までに酸素キックバック以外の抜け道を探さなきゃ」 根は白い髭のような根っこで土を探りながら何かを思案中。実がぷるんと真っ赤な頬を膨らませて囁く。 「水を吸い上げる根に負担が偏らないように雨を利用する?私を伝った雨を化粧水としてメロカリで売る。コロナ禍でも基礎化粧品の需要は高かった。売れたらキックバックもするわ」 枝は笑って身を小刻みに震わせた。 「薬事法ギリギリの胡散臭い化粧品みたいだな。実は花より使えそうだ。次の派閥の長は実で行く、どうだ、みんな?」 葉も忍び笑いをした。 「裏酸素より質が悪い、眉唾物の化粧品で裏金作り。儲かりそうだ」 こうして植物派閥の長は実になり、光合成の酸素のキックバックは無くなった。その代わり実を伝った雨を化粧水として売って植物派閥はますます増長して行った。 捕まった花のことなどすぐに忘れたように。
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