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二十歳を祝う会
講堂のロビーの大画面テレビの中で、今日は今年一番の寒気だと、鼻を真っ赤にしたアナウンサーがマイク片手に大雪の中に立っている。
二十歳を祝う会の今日、俺も周りも各々着慣れないスーツや袴、振袖に身を包み、二十歳を祝った。男はまぁまぁわかっても、女子なんかほとんど誰が誰だかわからない。会を終えたこの講堂のロビー、雪がちらつく外は、同い年の連中でごった返していた。
「東京けっこう積もったらしかね」
「こっちに積もったとなんて小六んとき以来やね」
「冬馬、明日東京帰るて言いよったろ? 帰れんとじゃなか?」
小学校の時の同級生の問いかけに「帰れんかも」と答えながら、俺の目はアイツの姿を探す。今だったら聞けそうな気がした。
小六の冬、聞けなかったことを。ある一人の少女のことを。
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