第1部/萌芽編ー相川夏美の抱えた性とコンプレックスの正体、そしてその原点ー

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その2 夏美 「…朝野さんにしたって、文化祭ならやっぱり参加したいってのが本音じゃないかな…。ましてや、男子と手を繋いでダンスだよ。それを桃子の方針に従ってまで、ボイコットに付き合うかな。好んでさ」 「アイコの言うことはもっとだとは思うけどさ、でも、相手はあの桃子だよ。一度刃向ったら、グループにいられないよ。それどころかいじめられるって」 キヨミのこの感覚が、概ねクラスの総意を物語ってるよね 要は、”そういう”ことなんだ! だから、私は行動してるのよ ... 「…ましてやよ。早々とレンコ達が不参加から外れたんならさ、桃子達だって、後は全員自分らの方針に従わせなきゃって思うよ。そしたらよ、朝野さんは転向して来たばかりだし、そうは逆らえないでしょ?」 私はみんなのやり取りを、注意深く聞いていたわ もちろんのこと… ... よし、ここで一言だわね 「まあ、傍から見ればユーキの言うとおり、朝野さんが自分の気持ちを桃子にはっきり主張するってのは、立場的になかなかしんどいってことはあるよね、やっぱり。でもねえ…、桃子を遠慮、いや怖れてさ、自分の正直な気持ちを抑えなきゃならないのってのも気の毒だよ」 「じゃあ、どうするっていうの、夏美?」 誘い水はアイコからだった ... 「ここはさりげなく、朝野さんの本心を探ってみたらどうかと思う。仮に彼女がダンス大会の不参加には反対で、桃子にそれを言い出せないということであれば、私たちもクラスメートとして手を差し伸べるべきじゃないかな」 「そうよね。夏美と私は担任からさ、”転校生には気を配ってやってくれ”って言われちゃったんだもんね。先生も、桃子たちのグループで彼女が自分を押し殺すんじゃないかと心配してるんだよ。だから、別のグループの私たちにもさ、新しいクラスメートなんだからってね…」 「でも、ユーキ、夏美…。そんなこと桃子たちに知れたらあの人達、黙ってないでしょ?」 今度フッてくれたのはキヨミだったわ
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