震える心

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震える心

人の心の声を聞く能力を持つ事は、ある意味怖い事でもある。 私がどの様に人に思われているか全て解ってしまう。 勿論、嬉しい時もあるのだが。 ある日、電車の中で男の心の声が聞こえた。 向かい側に座る女を狙っている。 それを解っていながら、私には防ぐ術がない。 男の眼光は鋭く、獲物を追う獣の様だ。 次の駅で、女は降りる。 それを追う男。 私は、怯えながらも女の無事を願う。 彼女の身に何も無ければ良いが・・・。 次の日、ニュースである男の死体が発見されたと報じられる。 「あの男だ!昨日の男だ!間違いない!」 と、思わず叫んでしまう。僕の身体に悪寒が走る。 …殺した犯人はあの女か? まさか、あの様な華奢な身体で大男を殺せるのか?… 私の疑問は、疑いへと変わっていった。 事件の解明は難航していた。 目撃者もおらず、男の死因が単なる心臓麻痺。 他殺か事故か?の区別もつかないまま時は流れる。 事件を忘れかけたある日時、私はあの時の女に遭遇する。 私の身体に震えが襲う。 私を冷たく見つめる女。 その時、私の心に聞こえてきた声は、 …ヤバい、あの時の男!私を見つめてる。私が犯人だと知っているのね。 始末しないといけないわ。あの男を殺す注射を用意しないと…… 僕の震えは最高潮に達していた。 僕は小心の臆病者。 …だから、心の声など聞きたくないんだ!… 心の中を読む能力を僕は恨んだ。 だけどその能力のお陰で、僕は前もって準備ができた。 僕が囮となって、必ずあの女を逮捕すると決意した。 小心で臆病者の僕だけど、僕の仕事はお巡りさん。 悪を許さない正義感に燃える、臆病者のお巡りさん。
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