05 純喫茶ポワール

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05 純喫茶ポワール

 夜九時、純喫茶ポワール  未だに分煙されていない古風なこの店は、確かオムライスが有名で何度か一人で来たことがある。四駅離れてるとはいえど、大学の沿線上に位置するので、私は警戒して大きめのマスクを付けた上で店を訪れた。  時間も時間なので、店内の客はまばらだ。  しかし、店の奥の奥、四人掛けのテーブル席に本を広げて座る男の姿を私の目はすぐに見つけた。二階堂四季は、昼に会ったときと何ら変わらない様子でそこに居る。 (やっぱり帰ろうか………)  そんな甘えが浮かぶ。  だって、彼が私のSNSアカウントを見つけたと分かったところで、べつに脅されるような内容は投稿していない。変な写真を上げているわけでもないし、悪口を書き込んだりもしていない。  発見されたと分かった時点ですぐにトイレに走って鍵アカウントに変更したけれど、怪しかっただろうか。友達にも教えていないアカウントだし、フォローしているのも好きな漫画家やドラマの公式ばかりだ。フォロワーの中に彼が居るとも思えない。  どうして見つかってしまったのか。  それぐらいは聞いておいた方が良いかもしれない。
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