05 純喫茶ポワール

2/2
前へ
/155ページ
次へ
「………ごめんなさい、お待たせしました」 「うん、待ってないよ。お疲れ様です」  声に気付いた四季が笑顔を向ける。  正面に座って、とりあえずホットコーヒーを頼んだ。  夜間にカフェインを摂取するのは控えていたけれど、緊張した自分はもしかすると彼が飲んでいたアイスコーヒーに引かれたのだと思う。しっかりして、と自分を叱責しつつ前に座る男を見据えた。 「それで……二階堂くんは、何がしたいんですか?」 「さっそく本題なんだ。俺がどうして貴方のこと探し当てたとか知りたくないの?」 「あ、それも…興味はあります」 「だよね。先週の金曜さ、授業終わった後に友達と大学残って喋ってたんだけど。そうしたら女の子がエゴサした画面見せてくれて、冬花さんの投稿見つけの」 「どの投稿を……?」 「んっと、堂林のPRが安っぽいとかいうやつ」 「………っ!」  なんということでしょう。  華金に浮かれたテンションで呟いたあの小言が誰かのエゴサーチに引っ掛かって写真の本人に届くとは。恐るべしネット社会。恐るべし若者の検索パワー。 「その反応、やっぱり冬花さんだったんだ」 「そ…それだけでなんで私だって分かるんですか!」 「アカウント名を見て、上げてる写真片っ端から見ていったら一枚だけ見つけたんだよね。社員証が少しだけ映ってるやつ。あれはたぶん消した方が良いよ」 「ワォ……」  言い逃れ不可避。記憶にもない写真から彼は私の身元を割り当てて、ここまで辿り着いたということ。  もうしばらく投稿は控えよう。  アップした写真は全部消そう。  心の中でそう強く決心した私の前で二階堂四季はもう一度綺麗に笑うと、とんでもないことを口にした。 「俺ね、冬花さんの秘密を知ってるよ」 「………秘密?」 「赤嶺(あかみね)先生のこと、好きなんでしょう?」
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加