07 カウンター

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07 カウンター

 SNSに投稿した既婚男性への恋愛感情をネタに強請られた挙句、貴重な金曜の夜を献上することになった。  そんなことってある? 「ないでしょうよ。いや、有り得ない」 「間宮さんどうしたの?やけに思い悩んでるね」 「………独り言です」  そっか、と言いながらまたガラガラと唐沢が席に戻るのを見届ける。  言えない。口が裂けても言えない。  昨日あったことを私が真剣に相談したとして彼女ならきっと「我が大学きってのイケメン男子学生と過ごせるなんてラッキーじゃん」ぐらいの反応しか返って来ないだろう。そもそもアカウントの存在を唐沢に知られるのは恥ずかしいし、赤嶺先生への気持ちなんてバレたら死んでしまう。 (なのに……なんで、よりによって学生に……)  二階堂四季は何故わざわざ私を指名してそのよく分からない勉強に付き合わすのか。  私がもしも二十歳そこそこの乙女なら「もしかして私に好意を……!?」みたいな勘違いを起こしてもおかしくないが、齢二十七にもなればそのあたりの現実は見えている。弱みを握った相手であれば、多少気に触ることをしても問題ない。そうした利点を見込んでの任命だろう。  貴重な金曜日の夜。  一週間の疲れを癒やすゴールデンタイム。  それが毎週他人との意味不明な勉強会のために使われる。それも今週から毎週。これは立派な脅しではないですか。まだ金銭を払って一回ポッキリのやり取りで終わった方がはるかにマシなんだけど。
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