08 はじめての電話

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08 はじめての電話

 金曜日の夕方、私は異常なほど緊張していた。  当たり前だけどべつに家に呼ぶわけではない。さすがに良く知りもしない男を部屋に上げるほどの阿呆ではないし、いつでも人を呼べるほどの部屋も持ち合わせていない。  四季の突拍子もない提案に乗るのならば、私自身も彼のことを知る必要がある。月曜日は流されてロクな抵抗も出来ずに別れたけれど、今日会ったら色々と聞くつもりだ。聞くべき事項はスマホにメモで保存済み。  今日は、大人女子としての対応が求められる。  取り乱さずに冷静な受け答えを。 「………えっと、もしもし?間宮ですけど」  時刻は六時半を回ったところ。  相手はツーコールで出た。 『ん、お疲れ様。今まだ大学?』 「うん…そうです。どこに行けば良い?」 『俺ちょっと遠くに居るんだけど、こっち方面でも良いかな?冬花さんのお家でも良いけど嫌でしょう?』 「当たり前に嫌ですね」  電話の向こうで四季が笑う。  その掠れた声に心臓がドッと高鳴るのを感じた。
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