09 レクリエーション

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 四季は私の前で携帯を取り出すと、何やらポチポチ打って私に見せてきた。画面ではメモ機能が開かれていて『一日目 レクリエーション』と書かれている。 「なんですかこれ?」 「今日はね、一日目ってことでフランクに会話でもしようよって意味。助手って言ったって別に毎回何か頼むことはないし、ただ論文書いてる間に一緒に居てほしいってだけの日もある」 「そんなの図書館でやれば良いじゃない!」 「だってそしたら遊んじゃうでしょう?そういう時、冬花さんには見張り役になって俺のこと怒ってほしいんだ」  私は呆れて口をぱくぱくさせた。  今時の学生たちが、誰かが勉強する動画配信を見ながら自分も作業したり、わざわざテレビ会議を繋いで一緒に勉強するというのは聞いたことがあるけれど。素直な意見としては一人で家でやれよ、と思う。 「食事代ぐらいは俺が出すから頼むよ。人助けだと思って」 「……学生に奢られたくないので大丈夫です。これっていつまで続くんですか?」 「とりあえず三年の終わりまでかな。四年になると色々忙しくなりそうだし。冬花さんさえ良ければ、更新もぜんぜんアリだけどね」  話し続ける四季の姿を見て私は一度目を閉じる。  なるほど、どうやら今月いっぱいという話ではないようだ。確かに最初から卒論云々とは言っていたけれど、今は春なので三年の終わりまでとなるとほぼ一年。一年間、私はこのガキンチョの勉強に付き合うと?  私にはいったい、何のメリットがあるんだ。
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