10 おすそわけ

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10 おすそわけ

「それ……私に良いことあります?」  ジトッと見つめれば四季は少し考えたあとで口を開いた。 「一人で寂しい夜を過ごす必要がない」 「むしろ一人で居たいんですけど」 「若い男と話せる」 「べつにそこまで若さ欲してないから」  呆れつつ「貴方はいくつなの?」と聞くと四季は二十歳だと言う。二十歳っておい。私が高校生のときにこの男はランドセルを背負っていたのだ。時の流れは恐ろしいこと。  なんだか敬語を使うのもバカバカしくなって、私は首を振った。こんな年下の男相手に弱みを握られてるなんて、なんとも情けない。 「あのさ、前も言ったけど、あまり揶揄わないでね」 「俺はずっと真面目に話してるよ。伝わらない?」  まったく伝わらないのでコクンと頷いたところで再び店員が銀色のお盆を手に持って席にやって来た。どうやらカレーが到着した様子。  本気にして話さない方が良いのだろうか?  終始飄々と話す四季を前にして、その一言一句に目くじらを立てていたら馬鹿みたいだ。時間を拘束されるのは嫌だけど、週に一回厄介なバイトが入ったと割り切るべきかもしれない。いずれにせよ、赤嶺先生への想いをバラされる方が痛いし。人助けかボランティア的な気持ちで乗り切ろう。
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