11 情報交換

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11 情報交換

 カレーを口に運びながら、私たちはお互いのことを語り合った。語り合ったとは言っても、最低限の信用を得るために必要ないくつかの情報を交換しただけだ。  例えば、私は四季に彼の学生生活や心理学を志すに至った経緯を聞いたりして、彼はわりと真面目にそれらの質問に答えてくれた。  二階堂四季について私が新たに知ったこと。  彼は大学から電車を乗り継いで一時間ほどの場所に家族と住んでいるけれど、週の半分ほどは友達の家で過ごしているらしい。彼曰く一限目の遅刻を防ぐためとのことだが、意外にも出席率を気にして行動していることに驚いた。最近の学生は友達に頼んで出席したことにする子も多いと聞くから。  大学生らしくバイトにも精を出しているようで、授業が早く終わる日などを利用して上手くシフトを組んでいるようだ。  話を聞く限りはいたって普通の男子学生。  編入ということで、日本の大学のカリキュラムに慣れるまでは大変だろうけれど、持ち前の明るさと人懐こい性格でその辺もそつなくこなしている様子。  ご立派ご立派、と密かに胸の内で拍手を送った。  正直言うとかなり疑っていた。赤の他人のSNSを遡って、見つけた弱点を武器に強請(ゆすり)を掛けるなんて、とんでもなくヤバい奴なのではないかと。  彼が取った手段はやや法に触れそうな感じはあるけれど、学びのために勉強をアシストしてほしいという熱意は伝わった。要は私は無料のレンタル彼氏彼女よろしく呼び出された場所で四季の学びを支援すれば良いのだ。
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