11 情報交換

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「でもさぁ、他に適任は居なかったわけ?」 「適任?」 「貴方ならきっと友達も多そうだし、頼めば一緒に勉強してくれる人も居るでしょう。それこそ、女の子とか喜ぶよ」 「うーん……ちょっと違うかな?」 「違うって?」  聞き返す私に、四季は以前男女数人で勉強会なるものを開催したけれど思ったような成果は得られなかったと語った。  おそらく原因は彼自身にあるのだろうけど、女の子たちは四季との雑談に時間を割きたかったようで、勉強にはならなかったらしい。想像は付くけれどあっぱれだ。  確かに彼女たちの気持ちも分からんでもない。  目の前で伏目がちに話す男を観察してみる。  跳ねる黒髪にシュッとした瞳、程よく引き締まった体躯を覆うシンプルな服装は好感度も高そうだ。加えてやはり帰国子女となれば外国語も堪能、私が学生の時に同学年にこんな男が転入して来たらテンションも上がることだろう。  さぞかし人生イージーでしょうに。 「それで、色々と頼みやすい私に白羽の矢が立ったと?」 「そうそう。冬花さんなら俺の邪魔はしないから」  同級の女子たちの好意をあっさり「邪魔」の一言で片付ける四季が恐ろしく思えたけれど、それだけ彼が本気で勉強したいと思ってるということなのかもしれない。  人助けだと思ってお願いだよ、という念押しの声に負けて、結局私はこの提案を受け入れた。こうして私の金曜の夜は、二階堂四季の手中に収まったのである。
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