04 呼び出し状

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04 呼び出し状

 転機は突然訪れた。  いつも通りの月曜日の昼過ぎ。昼食を済ませて睡魔と戦いながら返却された本の対応に追われていた時のこと。 「間宮さーん!ちょっと良い?」  間延びした声に振り返ると、唐沢がこちらを見ている。彼女の隣には学生なのか男の子が立っていた。ぺこりと頭を下げるその男の顔を見て、私はハッとする。  クシャッとした黒髪に切れ長の目、女ウケのよさそうな整った顔は、つい先日私が堂林大学のSNSアカウントで見た写真のまんまだ。まさかの噂の転入生のおでまし。 「……どうしました?」  動揺が顔に出ないように、すぐに視線を逸らして唐沢に近付く。 「なんかね、間宮さんに頼んだ件で話があるって」 「頼んだ件……?」  何も頼まれた覚えはない。  だって、私はこのキラキラ男子と接触するのは今日が初めてなのだ。勝手に写真を拝見したことはあっても、会話はおろか実物を目にしたことすらない。 「えっと、人違いでは───」 「あとは僕から説明しますね。ありがとうございます」  私の言葉に被せるようにそう言うと、男はズンズンとこちらに向かって来る。よく分からない私のことなど気にする風でもなく、唐沢は「はいはいーよろしくねー」と自分の持ち場に戻って行った。
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