冷たい指先

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バレンタインデー当日は、イベントのおかげで店は大盛況だった。テレビ中継があるせいか、リピーターのお客さんたちが入れ替わり立ち替わり来てくれた。 用意したスペシャルメニューのトリュフチョコレートは昼過ぎには完売して、いつもの看板商品の売れ行きも好調だった。人気では惜しくも2位だったようだが、雅さんも満足そうだ。 バイトの女の子たちも声を枯らして頑張ってくれて、みんな疲れた中にも達成感で高揚した面持ちだった。 店を閉めて雅さんが上機嫌で言った。 「今日はみんなお疲れさん! 片付けは明日にしてメシ行こう」 「わあい」 「やったー。雅さん大好きー」 みんな二十歳は越えているので、必然的に祝杯を挙げる流れになった。 「あれ。2人とも彼氏は?」 「チョコはね、昨日のうちに渡して来たの。こんなイベントなんて滅多にないし、生で見れて楽しかったー」 へえ 意外と割りきって仕事するタイプか 「(たける)さんはー? このあと会わないの」 「あー、いや。予定はないよ」 「ケンカでもしたの」 「そんなとこ。シカトされてるから、向こうも会うつもりないと思うけど」 「かわいそー。じゃあ、みんなで慰めてあげる」 「サンキュー」 無邪気なスタッフとご機嫌な雅さんに連れられて、俺は夜の街へ繰り出した。
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