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日本へ帰国した今。
人間は生きている限り、《娯楽》が必要である。例えば……、
「…………うそでしょッ?マリリンが無い!?」
ある晴れた平日の午後。
暦ではもうすぐ冬なのに雨が降る前振れなのか異常な高気圧で、薄らと汗が出てしまう暑さである。
空気の乾燥で喉を痛め易くなった現在。
そんな中、シゴトの呼び出しで某都会の片隅にある人気の無い静かな路地裏にて、コツコツ……、とヒール音が木霊となり響き渡る。
一歩ずつ歩く度、空気に溶け込むように冷たく消える無機質な音。
同時に翠に近い焦茶色の髪の色。左上に緩い大きめなお団子ヘアに、ゆらりと長めの後れ毛が歩く速度に合わせて緩やかに揺れる。
色気のある吊り目に唇の左下の黒子は、妖艶さを感じさせる女性の一部。
この裏道だけは、日が通らない場所の為涼しさが広がっている。だが場所が場所の為、空気はあまり良ろしくない。
なのに、懐かしい気持ちが蘇る。
……あの頃に、帰りたい……と不思議に思ってしまう程に。
だが、これからシゴトの打ち合わせだと、無理矢理気持ちを切り替える彼女。
先日職場先であるイタリアで購入したお気に入りのビジネススーツ。
身に纏う姿はスレンダーな身体付きにピッタリと似合う。オマケに背筋がピンッ!とした立ち姿をしている為、より人物のスタイルの良さと綺麗さが映える。
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