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*十章の弐
「……緋唯斗」
紺が、ぼくを呼ぶ。その声は低くてやさしくて――いつかの夢の中で聞いたものと同じだった。
声に、じんわりと先走りの蜜を溢れさせて躰が震えるように反応する。
触られている腰がとろけそうになりながら紺の方を振り返ると、紺はまた口付けてくる。
それから、ぼくのお尻の割れ目に沿うように宛がわれていた熱いものを、ぐっと近づけてこすりつけてきた。
――……すごく、大きくて、硬い…… そっとぼくが熱いそれに触れると、それはびくりと震えた。
「……ごめんなさい、緋唯斗……こんな形に、なってしまって……」
「……紺?」
「――……あなたが、欲しくて、たまらない……」
喉の奥からしぼり出すような声で囁かれて、ぼくは聴覚から乱されるように痺れた。
そんな風に言われたら、断ることなんて出来ない――目眩がするような初めての甘い感覚にいざなわれるようにぼくは紺の言葉に頷いていた。
ぼくが頷くと、紺はぼくにそっと四つん這いの体勢をとらせる。腰を紺の方に突き出すような格好になったけれど、不思議と恥ずかしさはない。ぼくのナカから、蜜が溢れ出てまた腿を伝う。
熱い躰がぼくのお尻のそこに宛がわれたかと思うと、それは一気にぼくを貫いた。
「あっ、あぁ……!」
初めて味わう感覚だった。熱くて硬い躰がぼくのナカに入り込み、それをぼくが咥えこんでいる。お腹に感じる圧迫感で苦しいはずなのに、それを上回る快感が走る。
「緋唯斗……すごく、気持ちがいい……ダメだ……もう、耐えられません……!」
「えっ……あ、あぁん!」
咥えこまされた躰が、ナカを抉るように押し込まれてくる。お腹がぎゅうぎゅうに圧されて、ぼくは紺でいっぱいになっていく。
腰をつかみ、激しく打ち付けられる。ぼくのナカを出入りして擦れる紺の感触に、ぼくも何かが崩壊してしまいそうだ。
肌がぶつかり合い、繋がり合ったところがぼくから溢れた蜜で聞いたこともないような下品な音を立て始めても、紺がぼくを貫く動きは止まらない。
快感の波が幾度も襲ってきて、身体がそのたびに痙攣するのに、ぼくは絶頂しても射精することがない。話だけで聞いたことがある、女の子のような絶頂の仕方ではとちらりと思った。
その内に、ぼくのナカの紺の躰の根元辺りが急に膨らんだ気がした。
「……え? なん、で……また、大き、く……?」
ぼくは紺の下に仰向けに組み敷かれながら、問うようにまた紺を見上げた。見上げた目には、これから何が起きるのかわからず怯える、乱れたぼくの顔が映し出されている。
紺は乱れた銀髪をかき上げて、それからぼくにそっと口付けをした。
「――……あなたに、種を仕込みます」
「……たね?」
「あなたが、私のものだという証に――」
言葉の意味を問おうとした時、挿し込まれていた躰がぐっとそれまでよりも奥に入ってくる。
これまでに感じた中で一番の圧迫感を覚えて、呼吸が止まった。
紺が、最奥に……そう、思った瞬間、熱い何かが身体のナカに注ぎ込まれる。
「あぁ! 熱ッ……熱いぃ! 熱いよぉ、紺!」
熱を刻み込むように、紺はただひたすらにぼくに腰を押し付けていた。震えながら、ずっと。
注ぎ込まれた熱はぼくのナカに収まりきれなかったのか、やがてだらだらとあふれ出す。
それが紺の言う「たね」だったのか、わからないけれど、注ぎ込まれてしばらくすると、身体の奥がものすごく熱くなっていく。
「っあ! あぁ! な、に……っやぁぁ!」
むずむずするようなもっと身体の奥を弄って貫いてほしいような、乱してほしいような、この上なく自分がいやらしい気持ちになっていく……――
身体中の体液が、ナカに注がれた熱が蒸発してしまいそうなほてりを感じながら、ぼくは紺の中で意識を飛ばしていた。
そして目の前が、真っ白になった。
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