*十五章の壱 甘いあまい初めてのふたりの夜

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*十五章の壱 甘いあまい初めてのふたりの夜

 するすると滑るような感触の襦袢に指を這わせながら、紺がその中に入ってくる。  式の間ずっと緊張していたぼくの手足をほぐすように、そっと紺が撫でてくれるのが心地よくてぼくは溜め息をついた。 「っは、ッあ……」 「緋唯斗、良いことを教えてあげましょうか」 「良いこと……?」 「ここに触れると……より、気持ちが昂るんですよ……」 「え? ッあ、ッはぁう!」  紺が、そっとぼくの耳――式の時に生えてきた三角の髪の毛と同じ色の狐耳に触れると、快感の衝撃が電流みたいに身体中を駆け巡る。  この前紺に初めて抱かれた時に感じたものとは違った感覚に、ぼくは簡単に呼吸を乱される。  紺はぼくの反応を確かめて、更に耳の穴の辺りに舌を這わせた。ぞくりとした快感がまたぼくを襲う。甘えた啼き声が漏れてしまうのが止まらない。 「な、に……? っや、あぁん!」 「狐人の耳は、性感帯なんですよ……それも、とびきりの」 「っふ、うぅ! っあぁ!」 「緋唯斗も立派な狐人(きつねびと)ですね……かわいいですよ……」  低く甘い紺の声が三角の耳を滑るように聞こえる。鼓膜を揺らす感覚が心地よくて、ぼくの身体が、躰が、どんどん熱を帯びていく。  襦袢の中の肌をやさしく撫でていた紺の指が、するりとぼくの股間に宛がわれる。そこは昔からの習慣に(なら)って、花嫁であるぼくは何も身に着けていない。  だから、躰がいまどれだけ熱くなっているのか、紺にすぐわかってしまうのだ。  宛がってきた手が、耳元の声や舌を感じて()ちあがった躰をそっと握りしめてゆっくりと扱く。  呼吸が、合わせるように荒くなっていく。小さく、濡れた肌の音が聞こえ始める。  そして同時にまた、紺はぼくの耳を舐めたり、やさしく()んできたり。それがたまらなく気持ちがよくて声をあげてしまう。 「っあぁう! あ、んぅ!」  吐き出す息が、すべて甘く乱れているのを自分でも感じる。紺からのも、同じくらい甘くて熱い。  硬く勃ち上がった躰がいまにも吐き出しそうに震える。先走りの蜜が紺の指に絡みつく音がしていてぼくはたまらなく恥ずかしかった。 「紺……もぅ、出ちゃ、うぅ……!」 「出してください、たくさん……すべて飲み干してあげましょう」 「っや、あぁ、んぅ! っは、あぁ、あぁッ……――!」  紺の下に組み敷かれ、その手の中にぼくは震えながら白濁を吐き出した。襦袢が、じんわりと濡れて汚れていく。  ぼくが吐き出した精液を、紺は指先にまとわりつかせたままうっとりと眺めたかと思うと、それを口に含んだ。 「っは、っあ……こ、紺!」 「美味しいですよ、緋唯斗」 「そ、そういうことじゃ……!」  恥ずかしさで赤くなっていくぼくに構わず、紺はするりと自分の寝巻の帯を解いた。  薄暗い闇に浮かぶほどに白く細い、だけどバランス良く鍛えられて逞しい裸体が現れる。熱を滾らせた雄芯も隠すことなく曝け出して。  ぼくは肩で息をしながら身体を起こし、膝立ちしている紺の前にそっとかがみこんだ。そして、彼の躰に手を添え、おそるおそる口付ける。  躰は、ひくりとかすかに揺れ、ぼくはその先からわずかに溢れている先走りの蜜を舐めた。 「……紺の、味」  言葉にして口にした途端、ぼくは手の中にあるそれがたまらなく愛しくて仕方なくなった。熱く硬い彼を、もっと愛してみたい。  だから、ぼくはそれを口に含んで舌を這わせ愛撫を始めた。 「っく、ン……っふ、っは……ん、んぅ」  初めてやったことだから、上手くできているとは思えなかったけれど、ただひたすらに紺にも気持ちよくなってほしくて一生懸命愛撫する。  濡れた音が次第に聞こえ始めて、心なしか紺の腰が揺れ始めている気がした。  紺、ぼくを感じてくれている……? そう脳裏に過ぎった途端に、ぼくはもっともっと彼が欲しくなって、夢中で舌を這わせる。  口の中の紺がどんどん熱く硬くなっていく……先走りも、すごい……そう、思っていたら、急に後頭部をつかまれてグッと押さえつけられた。 「んんぅ! っぐ、うぅ!」 「ッあぁ、緋唯斗……受け止めて、下さい……!」  紺の腰が激しく動き始めて、口の中も喉の奥も紺でいっぱいになって苦しくて息もできなくなってきたその時、熱いどろりとしたものが口いっぱいに注がれて広がるのを感じた。それは喉の奥にも流れていく。  紺が吐き出した白濁に少しむせながらも受け止めたぼくは、それをためらうことなく飲み干す。  身体中に紺の熱が行き渡って、ぼくはなんだかとろけるような甘い気分だ。 「……美味しい、紺」 「緋唯斗……」 「ねえ、もっと、ちょうだい……」  ぼくは、もしかしたら嫣然(えんぜん)と笑っていたのかもしれない。まるで、紺を誘うように、煽情(せんじょう)的に、淫らに。  紺はぼくを組み敷きながらまた口付けをしてきた。互いの口の中には互いの吐き出した白濁が残っていて、口付けて舌を絡ませるとそれが交じり合う。  なんていやらしいんだろう……でも、すごく気持ちが良い…… そして、もっと欲しいと思った。
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