ファンタジーは突然に

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こんな僕にも、楽しみがある。 "推し"がいるのだ。 芸能人やアニメキャラなどではなく、超現実的な推しが。 彼は、たまに弁当を買いに来てくれるお客さん。 正統派イケメンというわけではないが、背が高くてガッシリとしていて、何より清潔感がある。 そんなに愛想が良いわけではないのに、ぶっきら棒とはまた違う、何とも言えない魅力を持った人。 僕より五歳も歳下である彼が、美容師だと教えてもらった時は驚いた。 華やかな世界のわりに、彼は非常に落ち着いている。 でもあの指で、優しくシャンプーをしてもらえたら さぞかし気持ちが良いだろうな…… 風呂上がりには二人でベランダに出て、夜風にあたりながらビールを飲んだりして。 あぁ、早くも宅飲み設定にしてしまった── 「すみません、聞こえてますか?」 「あわっ、はいっ!?」 妄想が現実に?いや 違う! 「体調が悪いんですか?」 「悪くないです、元気ですっ!」 ダメだ、変な妄想をしてしまった。 「い、いらっしゃいませ!(すばる)くんっ!」 僕の密かな楽しみの、その本人が来てくれたのに、失礼がないようにしなければ! 「疲れてませんか?遠くを見つめてましたよ」 心配してくれてる……それだけで嬉しい。
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