ファンタジーは突然に

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僕は嬉しさをひた隠しにして、火傷しそうなトンカツの熱さなんか気にもならず 食べやすい大きさにカットしていく。 真っ白なご飯に梅干し、自慢の筑前煮、少し甘めの玉子焼き、千切りキャベツの上にトンカツを乗せ、特製のソースをかければトンカツ弁当の出来上がりだ。 「お、お待たせしましたっ!」 「ありがとうございます。良い匂いがする」 弁当を手渡しする時、少し細められた瞳をダイレクトに見ないようにしながら、お会計を済ませた。 「では、いただきます」 「はいっ、いつもありがとうございますっ!」 慌てて深く頭を下げた弾みで、また今日もショーケースに額をぶつけたことを、彼は知らないだろう。 弁当の入ったビニール袋が斜めにならないように気をつけながら、ピンと伸びた背筋で去っていく後ろ姿を見送っていることも。 『店長と話してると、穏やかな気持ちになります』 ようやく先程の、昴くんの言葉を脳内から引き出し、ひとりで味わった。 取り留めのない会話しかしていないと思うのに、僕と話すと穏やかな気持ちになってくれてるんだ……! 嬉しい、嬉し過ぎる! 弁当を褒めてもらうのも嬉しいけれど、それとは別の嬉しさが込み上げてくる。
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