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「店長!何をニヤついてるんですか?」
いきなり声を掛けられて、飛び上がりそうになった。
「怪しいですよ。店の中から外を見て、不気味な笑顔で立ってるの」
「そ、そう?笑ってたかな、僕」
「えー!無意識ですか?余計に変ですっ」
眉を顰め、大袈裟に身体を震わせる真似をした女性──アルバイトの加納 沙希子ちゃんだ。
まだ若い彼女はフリーター、さっぱりした気さくな性格で、人当たりも良い。
昼食時の一番忙しい時間帯から夕方の完売時間まで、たまに店を手伝ってくれる貴重な戦力だ。
本当は父さんと母さんが交代で入るのだけれど、二人とももう若くはないので、週に何日かは沙希子ちゃんを頼りにしている。
「ねぇ、店長。さっき昴さん来ました?」
「熱っ!!」
フライヤーに残っていたパン粉が爆ぜて、僕の顔を直撃した。
「熱っ、き、来たよ」
慌てて濡れ布巾で冷やしていると、沙希子ちゃんはぷりぷりしながら僕を睨む。
「もう!あのタイミングで休憩してなかったら会えたのに……どうしてくれるんですかっ!」
……僕のせいじゃない。
確かに剥れたくなる気持ちはわかるけれど。
何を隠そう彼女も、僕の推し、田宮 昴くんを熱烈に推しているのだ。
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