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〆
『死亡診断書』あるいはこの『死体検案書』がなければ、火葬場にも運ぶことは出来ない。
本来ならばこのケースは脳梗塞の既往があるので、調査法解剖に回しても良いのだが、日本の解剖率は4%程度。監察医制度のある東京23区でも18%にすぎない。欧米先進国の平均50%に比較すれば、いかに日本で解剖が実施されるケースが稀かわかる。
特に『八百万の神』を崇める風習のある日本では、ご遺体に傷をつけることを厭う。
また現代においては葬儀に時間をかけず手際よく済ませたい家族にとって解剖の結果を待つ猶予はなく、医学の進歩の為と説得したところで、問題がなければほぼ解剖に同意を得られないのが現状なのだ。
間取が手際よく『死体検案書』を書き終えて、念のため黒岩に確認しに行くとニヤリと笑って顎でこっちに来いと送迎に使われた公用車に誘われた。
予想していただけに面倒だったが、間取は仕方なく先ほどと同じように後部座席に横並びに乗った。運転担当警察官は乗り込まず、外で待機させている。若いとはいえこの寒いのに、ご苦労なことだと思う。さっさと話しを終わらせようと、間取は心に決めた。
「で、何がわかった?」
「そこに書いてある通りだよ」
死体検案書を見ているんだから、書いてあるだろうと毒づきたくなったがぐっと堪える。
「嘘をつくな。お前が気づいてないわけあるか」
「それが警察官のいう台詞?…黒岩警視正こそ分かってるなら聞かないでくださいよ」
本当に腹立たしくなる物言いしかしないな、こいつ。
私はお前の部下じゃねぇ、と口から言葉がころび出そうになったのをまた拾う間取であった。
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