15、傀儡のライバル達からの果たし状

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15、傀儡のライバル達からの果たし状

 無事筆記と実技の中間試験が終わり、季節は新緑が輝く日中は少し汗ばむ気候に移り代わった。  四人は学校の中庭のガゼボでお茶菓子を共にティータイムを楽しんでいた。 「あーん」 「もう。甘えん坊ね」  腰を抱かれつつ、クッキーを口に入れてとヴァイスハイトに急かされ、デーアはクッキーを手に取り、愛しい人の口に運んであげる。 「んー」 「ちょ! 自分で食べられるから! っん! んんんっ!」  ゲニーの膝の上に座らされ、アンジュは愛しい人に口移しでクッキーを食べさせられた。 「何とも仲睦まじいことだ」 「少し妬けてしまいますね」  突然目の前にゴルト王子とシュタールが現れ、四人は改まる。 「ゴルト王子、どのようなご要件で」  そう言うヴァイスハイトは表面上取り繕うが、デーアとのイチャつきを邪魔されて内心不機嫌になる。ゲニーに至ってはあからさまに嫌そうな顔つきで二人を睨んでいた。 「この度国王陛下の元、デーア嬢とアンジュ嬢の婚約者の座をかけて台覧(たいらん)試合の決闘を申し込みます。これが正式な書面になります」  シュタールはそう言い羊皮紙を広げて見せた。そこには国王陛下の押印があり、本物であることが分かる。エーデルシュタイン王国では何かをかけて戦う際、その主張が法に触れない限り、王族のもと台覧試合での戦闘で決めることが認められている。暴力や殺戮(さつりく)ではなく、実力で欲しいものを得よとのことらしい。 「この台覧試合は確定事項、棄権は即敗退を意味する。仲睦まじい君達に水を差す訳だから、少しハンデをあげるよ。ヴァイスハイト殿は俺と貴殿の得意なチェスで勝負を、ゲニー殿はシュタールとこれも貴殿の得意な魔法での決闘をしよう」 「まさかここまでハンデをあげて戦わないということはないですよね?」  ゴルトとシュタールに喧嘩を売られたヴァイスハイトとゲニーは二つ返事で決闘を了承する。返事に満足したゴルトとシュタールはその場を去っていった。 「アイツら……傀儡の魔法がまだかかってた。ヴィー、気をつけた方がいいと思う。試合で何が起こるかわからねぇ」  ゴルトとシュタールの異変に気付いたゲニーはヴァイスハイトに注意を促す。 「傀儡の魔法をかけた黒幕の目的は何なんだろう。とにかく是が非でも勝たないとな。デーア、大丈夫だ。絶対勝つから」  ヴァイスハイトにそう言われるが、デーアは不安になり顔が曇る。一筋縄では行かない気がするからだ。またアンジュも不安そうにゲニーを見つめた。 「おうおう、何疑ってんだよ。絶対勝つから大丈夫だって。この国で僕に勝てる魔法使いなんて、魔法団総帥くらいじゃねぇの?」 「普通に勝負をしたら、ね。ゴルト王子達が何もしてこないとは思えないよ。私達にも出来ることはないかな?」  アンジュは真剣な表情でゲニーに問う。 「台覧試合は決闘を申し込まれた側のみ、一度だけ選手交代のカードが切れる。もし、僕が負けそうになったら……アンジュ、君に代わりとなって戦ってもらう。いいかな?」 「もちろんよ! 私達の婚約だもの、貴方だけに戦わせるつもりはないよ」  アンジュはそう言い微笑む。 「ヴィー、私ももしヴィーが戦えなくなったら選手交代して欲しいわ。なんてったってチェスは貴方より強いという自負があるもの」 「デーア、ありがとう。君の出番が来ないことを祈るが、もし何かあったら頼む」  二週間後に控えた台覧試合へ向けて、この日からヴァイスハイトとデーアはチェスの研鑽、ゲニーとアンジュは魔法試合の演習に明け暮れた。
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