Chapter3 Smoke on the water

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第21話 Made in Konoe  「エンジン始動!ヨシヒロ!カンナギ発進準備!」 「了解艦長。ヨシヒロ・ムラカミ、戰場に罷り通る!」 「発進と同時に、66mm自動バルカン『ワグテール』を起動!」 操舵室に入って早々にミランダが矢継ぎ早に指示を飛ばす。 「ハッチ開け、ヒヅル機と……仕方ない、フィリス部隊を空へ配備。 ウォルノ機とジェゴ4機1部隊で地上配備!」 ジェゴは、地上で無敵のヤクシャの血を継ぐ量産機だ。 装備も普遍化とオミットがされているが、戦力として申し分ない。 「了解ネ、各員発進ドウゾ!」 「あいよ!ウォルノ・マイシー、ヤクシャ出るぜ!」 「フィリス、マドゥ=クシャ出撃」 「ヒヅル・オオミカ、アマテラス!行きます!!」 チョウの発進合図とともに3機がカタパルトから勢いよく勇猛果敢に飛び出した!  「とうとう名前、付けたのか。死ぬなよ!ヒヅル!」 「ウォルノこそ!」 ハッチから出た先は戦火の大地が広がっていた。 無数の敵機が、基地を蹂躙し厄災の火が吹き続ける。 だが、地上の様子に気を取られている暇はない。 60機はいるだろうバーロックの編隊が、即座に攻撃を仕掛けてきた。 「くっ、こんな奴らにィ!」 細かくX字のブースターの制動を駆使しながら銃撃を回避をする。 ビームカービンの銃口を向け連射すると、3機に直撃する。 が、3機の翼部や腕部を破壊するに至ったのみだった。 「ッ!外した!」 「聞いていたほどの腕前ではないのね」 マドゥ=クシャが、両肩の円形シールドに放射状に仕込まれたビームガンを連射して、瞬く間に敵を撃墜していく。 「さっきよりはいい眼をしてる。 でも貴方は未だ迷ってる。迷いある兵士は下がってて」 フィリスはヒヅルにそう言い捨て、編隊のまま、敵陣へ向かっていくのだった。  「空戦機、フィリス部隊が着々と沈めてマス!」 「地上は!」 「ウォルノ機とジェゴ4機がそれぞれ分断孤立!」 操舵室が着々と発進準備をする中、緊迫感が高まった。  「どひゃァ~~~ッ!地上は最新機かッッッ!」 ウォルノはゴブ・オーグ1機と無機質でシンプルな機体4機からなる編隊を相手にしている。 空に一機が飛び上がり、ショットガンを乱射すると同時に、ウォルノが後ろへ飛び上がる! しかし、後ろから残りの4機のうち2機がライフル、2機が接近しての斬撃を仕掛けてくる。 「ハン!それくらい想定済みだ!」 体を捻り、飛びかかってきた2体をバスタークローでぶん殴ると、そのまま片方の機体に乗っかり大きくジャンプする。 「なんとか包囲は解いたが……気持ち悪ィぜ……。 顔ものっぺりして装甲も最低限、まるでドールの素体みてぇだ」 その最新機体(ビスクドール)が一斉に剣を抜いたと同時に、背後から5機1小隊の編隊がウォルノに近づく。 「コイツら。あの反応速度で一糸乱れない統率。 ……まさかな。白黒ハッキリさせようじゃあねェか!」  「カンナギ、発進OK」 「では発進だ!艦長、ガンディードも使用許可を」 「分かっている。カンナギ発進離陸!」 山間を割るかの如く、天を征く剣がとうとう発進した。 その姿に、敵も味方も目を向けて固まった。 ヒヅルもその勇姿には気を取られた。 闇夜でも光る白銀は輝くほどに眩しかった。 「目標、前方敵軍!エネルギー収束砲『ガン・ディード』全4砲門! 撃てーーーッ!!」 ハッチの両サイドにつけられた、4つの砲から青色のビームが敵軍を薙いだ。 敵兵はとっさの回避行動を取るが、10機ほど閃光の中へ塵と消えた。  「そのまま、ワグテールで牽制!西に向けて航路を取れ!」 「うむ、ワグテール全砲門開け!ヨシヒロ、西へ舵は取れるか?」 ジェイが厳しい顔で、尋ねる。 「敵は西より大多数。北西は手薄ゆえ可能なり」 「西には行かせない、ということか。敵もやるな」 「感心している場合ですか、ジェイ。 仕方ない、ここを脱することが先決だ、あくまでも敵の狙いは私達! 北東の九重海上空へ! チョウは全乗組員へ通達お願い!」 ミランダが即座に判断を下す。 「全カンナギ隊へ通達! これよりカンナギは進路を北西の方面にヘンコウ!」  「ウォルノさん、退かないと乗り遅れましてよ」 フィリスの言うとおりだ、カンナギはどんどん速度を上げている。 「退きてェとこだが、モテる男はそう簡単に帰してもらえねえみてェだぜーーーーッ!!」 ビスクドールとゴブ・オーグの乱れぬ動きがウォルノすら翻弄する。 直撃しないまでもライフルの弾が確実にヤクシャの装甲を傷つける。 「こいつら、やっぱクロかッ……おい、ミランダ!」 「ガキじゃない!ミランd」 「太極図システムなんだッ!地上の試作機は!マジにヤバイぜ……!」 ウォルノのその言葉をその時、誰も理解できなかった。 一寸の時間停止の後ジェイが質問を返す。 「つまり、敵は奪った太極図システムを搭載している、と言うのかね」 「パクられてるとしか考えられねェ~~ぜこの動きはよォ……! システム同士を横つなぎして、連携まで取ってやがる」  想定できる最悪の事態が、今訪れてしまった。 現帝国と共和国の技術において、共和国側が優位を取っていた理由。 それは唯一AIを利用した操縦技術であった。 ある程度、意思だけで操縦ができる太極図システムは画期的なものであった。 だが、画期的なシステムそのものが牙を剥いた。 同時に量産型の太極図システムにより、帝国国民全てがいつでも兵士になり得る可能性すらあり得る。 「いいぜ、やってやろうじゃあねェか……。 決めようぜ、どっちが"ホンモノ"かをよぉ〜〜〜ッッ!!」
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