潮風をきって走れ

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「スイム1位スタート、3年、新田みのり!」 「2位スタート、3年、普恩寺まき!」 「3位、3年、三島ハルミ!」  チェッカー担当の先生たちが、口々に叫んでその時点のタイムを記録する。  そのあと急遽、かわりの予備のスイムスーツをもってきてくれた先生たちの助けをかりて、なんとかその場でウェットスーツに身をつつみ―― スイムゴーグルを目の定位置に決めて――  ようやくスイムをスタートしたその時点でのわたしの順位は、16位。  大きくここで順位を落とした。  せっかくのランで稼いだ大量のタイム差を。まったく生かせなかった。まったくすっかりムダにした。わたしはほんとに愚かにも――  しかし。  わたしはここで、自分自身の呼吸と戦いながら。  もうぜったい、逃げたりはしない。遅れたことの言い訳もしない。  わたしはわたしは。勝つために。勝ち切るために。  この日のために、トレーニングを積んでいた。  去年、1年のときに初参加したこのイベントは。  ランでは断トツの1位だったけど。やっぱりスイムでつまづいた。  ここで順位を20位まで落とし。最後のトレイルランでは、少し順位を上げたけど―― 『まだ一年だから。』『スイムはわたしの専門じゃないから。』とか。  そういう言い訳、したくない。本気でわたしが戦って。それが何の競技であっても。本気でやって負けたことは、少しも言い訳できないのだから。  だからわたしは、去年ここでスイムで順位を落としてからは。  こっそりときどき、家から近い、浜野浦の浜で。  学校の他の誰もが見てない時間に。ひとりでこっそり、スイムの練習を重ねてきた。水泳部の友達にこっそり腕のフォームのことをきいたり、息継ぎのヒントをもらったり。あとはネットでも、いろいろ情報自分で調べて。スイムでも、今度はぜったい勝てるように。わたしはこっそり、この日のために。  トレーニングしてきたんだ。すべて努力してきた。ひとより5倍も6倍も。努力をずっと、してきたんだ。  だから負けない。負けたくない。  わたしは負けない。負けないことは、自分自身との約束だから。
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