潮風をきって走れ

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     204号線から「海上温泉パレア」の方面、つまり西側の道へそれる。  スタートからの距離はおよそ1キロ。ランの中間地点の、少し手前というところ。 「いいぞ! 1位通過だ! いいペースだぞ外津!」  陸上部顧問の大園先生が、国道からの分岐点のところから声をとばした。  分岐点の付近には、コースを示す赤のコーンと、「ここを左折!」の大きな矢印と。あとは、ギャラリーというのか、観客というのか―― みらい学園の先生や、一部の保護者が道の脇にたって、そこを通過していくランナーたちに声援を送っている。この分岐点の時点で、2位グループとの距離は20メートルあまり。このあと1キロあまりのランで、この差をさらに広げたい。いや。広げる。それはもう絶対だ。  わたしの心臓は激しく脈をうち血液を送りながらも、その激しさは正常。わたしの理想的な走る時の拍動をここまで刻んでくれている。わたしが世界に感謝しなくちゃいけないたくさんのものの中、たぶんいちばんたくさん感謝すべきなのは、このわたしの強くタフな疲れ知らずの心臓だ。わたしという存在の意味を、とても分かりやすい形で鼓動と熱でわたしに教えてくれる。わたしのいちばんの味方だ。これをわたしに、生まれるときにプレゼントしてくれたわたしの母と―― もう今はいないけれど、わたしにそれを残してくれたわたしの父に。わたしは何度も、これから先もありがとうを叫ぶだろう。わたしが負けずに勝ち続けるそのたびに。
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