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「チイチイママ!」
フットは大きめのサイズのチョコを手にチイチイに駆け寄った。
「お、フットか。その大きなチョコレートは誰かから貰ったん?」
「は、はいそんなところです」
フットはチイチイを目前だとギクシャクし、つい目的とは裏腹の言葉で返事してしまう。
(違うんだチイチイママ。これはチイチイママに作った手作りのチョコで…っ!)
そう言おうとしたが気持ちと反して口からは中々言葉に発する事が出来ない。
「そうかそうかーフットも隅に置けんなー」
チイチイは納得するように頷く。
(違う違う違う!フットよ違うと言ってくれ!)
なおフットは心内では違うともがきながら外では照れて笑っていた。
そしてフットはチイチイの両手に一袋ずつ持ってるパンパンになった紙袋に目が入る。
見るとラッピングされたチョコが沢山詰まっていた。
「チイチイママ、それ…」
「ああウチもいっぱい貰ってて困ってたんよ。それで貰ってない子に分けようとしとってん」
チイチイはカラカラ笑いながら貰ったチョコを見せる。
「そ…そうですか……」
フットの頭の中は真っ白になり、気の抜けた返事をするのみだった。
「余ってるからフットに分けようと思ってたけど既に貰ってるなら良いや。またな!」
チイチイはタタタと走る。
びゅううぅ…虚しく風がフットに吹き付ける。
そこらに舞う落ち葉のようにフットのバレンタインの青春は虚しく散った。
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