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退屈な退屈な冬。雪乃は毎年この時期になると体を壊してしまう。犬のように雪の上を駆け回るなど、夢のまた夢だった。
しばらく雪乃が寝ていると、また枝が現れた。今度は先程のような頼りない揺れ方ではなかった。しっかりと意思を持っているような揺れ方。
雪乃は布団の中から話しかけた。
「あなたはだあれ? 遊びに来てくれたの?」
枝は雪乃の声に反応して一瞬驚いたように動きを止めたものの、遊びに来た、という言葉に反応してかもう一度揺れた。
「遊びに来てくれたのね。でもごめんなさい。私春にならないと外へ行けないの。冬はすぐに苦しくなっちゃうから」
枝は戸惑っているようだった。小さく揺れたり、止まったりを繰り返した。
しばらくして枝が少し遠ざかった。すると今まで隠れていた部分が見えるようになる。──枝の正体は雪だるまの手だった。
「あなた……雪だるまだったのね。下には雪うさぎもいる……」
細い木の枝の手、みかんの両目、それにバケツの帽子。そんな雪だるまの側では雪うさぎがまるで兎のようにぴょんぴょん跳ねている。雪うさぎの南天の実の目と葉の耳は雪乃の家にあるものだろうか。
雪だるまは丁寧に頭の上のバケツを取ってお辞儀をして、雪うさぎと共に帰って行った。
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