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それから何日にもわたって雪だるま達は現れた。彼らは毎日庭を跳ねたり、横に揺れて踊ったりしていた。
母親が様子を見に来た時は動きを止めてただの置物になった。それでも時々枝を揺らしたり、跳ねたりしていた。雪乃は必死に笑いを堪えていた。見つかったらどうしようと悩んでいたのも最初のうちだけだった。
ある日、雪乃の寝ている部屋のふすまの向こうで母親が雪乃を呼んだ。雪乃は「はあい」と返事をすると母親が入ってきた。それを合図に雪だるま達は動きを止める。
「ゆきちゃん最近楽しそうね」
「お友達が出来たの。お庭にいる雪だるまさん」
「まあ。それにしてもあの雪だるま誰が作ったのかしら」
「私、春になったら雪だるまさんと遊ぶんだ」
母親はしばらく沈黙した。雪乃は、その間も春になったらどんな遊びをしようかと話している。
「お花見もいいし、一緒にお弁当作るのもいいし──」
「ゆきちゃん。あのね、春になったら暖かくなるでしょ? そうするとね雪だるまさんたちは耐えられなくて溶けちゃうの。雪の中だけなの、雪だるまさんが生きることが出来るのは」
雪乃は何も言えなかった。言われてみれば、確かに春に雪が残っていることはない。あっても少しだけだ。
冬に生きられる雪だるま達と冬には家から出られない雪乃。二人が一緒に遊ぶことは叶わない夢だった。
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