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生半可な返ししかできない、何て答えるのが正解か。
まあ悩んでいるわけでもなさそうだし、寧ろ自分に言い聞かせている感じだから、ここでの私は聞き役に徹することにした。
その時マユは、あっ! と立ち上がり、周囲の視線を集めたと気づくと慌てて着席した。
「どうかしたの」
落ち着かないマユに対して、私は落ち着き払い問うた。
「私ばっかり惚気ちゃってごめん。アヤにも早く、幸せになってほしいんだ」
マユは純粋に私の身を案じている、優しい子だ。
「別に私、不幸せなわけじゃないよ」
だが聞き捨てならない。
彼氏持ち = 幸せ ?
確かに私に彼氏はいない。
けど遡ればいた時期もあるし、その頃が幸せだったとも思わなければ、現状に不満があるわけでもない。
強がっているわけじゃなくて、本当に今は幸せでも不幸せでもどちらでもなかった。
誰かと比べれば、そりゃ幸せにも不幸せにも傾ける。
上を見ればキリがないし、下を見たって意味がない。
考えないようにしていた、自身の客観的な立ち位置を。
資産、彼氏、美貌、家柄……指針は山ほどあるが、私は勝ち負けに拘らない。
「いつも私が相談してばかりだったから、シュンちゃんどう。
いいと思わん? 最近、彼女と別れたんだって」
随分近場で提案するなと思いながらも、私はマユをジッと見詰めることしかできなかった。
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