2023年10月2日

4/4
前へ
/69ページ
次へ
 未来の娘に恋してどうする。  可愛いと褒めてくれたのは、あだ名のことだと捉えた。 「校内の案内を、お願したかったんだけど」  父は無視して委員長に。 「昼休み、残り少ないわね。放課後でもいいかしら」  凛とした態度の委員長。 「うん、誰かお願できるかな」  建物内でも地図アプリを頼れた未来と違い教室やトイレ、昇降口の場所をいちいち自力で覚えねばならない。  未来は(ここ)よりも便利なので、頭を使わなくても迷子にならないのだ。  俺が、と立候補してくれた父の、後頭部をスコンと手刀打ち(チョップ)した山下が答える。  俺いいよ、との返事には夢ちゃんが、あからさまに嫌な顔をしたことに、勿論ミクは気づいていなかった。  寧ろこれから始まる異世界……じゃなくて過去生活(ライフ)への期待に、大きく胸を高鳴らせていた。  初日の放課後を迎える。  決して広くはない校内だが、覚え慣れていないミクの脳みそは疲弊していた。  それに気づいてか山下は気持ちゆっくり歩き、何度も立ち止まってくれる。  また教室の位置や造りだけでなく、先ほどの生徒たちについても教えてくれた。  夢ちゃんが学園のマドンナだったり、じゅんじゅんが剣道の全国覇者だったり、そして都が現役東大合格圏内だったり。  クラスメイトみんな親切だったので、緩やかに溶け込むことができた。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加