2023年10月某日

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 たった二六年先の技術だ、未来が現実になるまで待つ。  タイムマシンというか時間移動の技術を使い、彼女のママに会うため過去へ遡ることは理論上可能だ。  しかし時間旅行には審査が沢山必要で、実現できるのはほんのひと握り。  米国の技術であるため、日本在住の彼女は特に難しいだろう。  またそもそも時間旅行は、実験の延長レベルなので非公開だ。  どうした、と山下が入ってくる。  ミクは涙が止まらなかった、自分は恵まれていたのだと知った。  願っても叶わない人は沢山いたと、思うと言葉にもならなかった。  ちょっと面白そうだから、当初そんな些細な理由でミクは応募を検討した。  山下くんに会ってみたい、そんな後づけの理由は、今のヒサちゃんほど強い思いじゃない。  比較対象ですらないだろう。  最初の審査を通過(パス)してからは、折角だから最終まで残りたいと欲を出し、残ったら残ったで受かりたいと。  行き当たりばったり、お気楽な遊び(ゲーム)感覚だったのかもしれない。  本気という感覚を、ミクは知らなかった。
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