2023年10月22日

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「くうちゃん、様子おかしいよ」  気遣ってくれるのはじゅんじゅんで、今は弁当を食べている。  本日晴天、ピクニックみたいだ。 「そいつ朝からなんだよ、考え事みたいな顔してさ」  山下はミクを指差す。朝、と聞き返すのは夢ちゃん。 「何かあった、まさか苛めか」  大袈裟なのはかっちゃんだ。  父はいつでもこんな風に、距離感を無視して踏み込んでくる。  だが母はこの真っすぐさを、好きになったと言っていたっけ。 「苛めって、なんだっけ」  勉強もネットな未来では、各科目の担当教職員が数名、オンライン上に授業を配信しているだけだ。  単位に関わる授業については生徒参加型だが、受ける場所は自宅外(どこ)でも構わない。  友達は地元の行事(イベント)(クラブ)活動など、強制力の低い場所で作る。  気の合わない人とは基本的に、関わらないで済む仕組みだ。  未来では、SNSでの仲間外れが年齢関わらず重く罰される。  だから大抵の揉め事は、男女間の縺れだった。 『あの男は、運命の人ではなかった』 『やっぱり彼氏より、女友達』  などと一報し(メッセージ)粗品(オンライン ギフト)と共に言い訳を添えた。  人との繋がりって何だろう。 「どうして人は、群れをなすんだろう」  ミクは呟いた、誰かに聞かれるつもりなどなかった。  ただ思ったことが声に出ていたのだ。 「変な奴、そんなの縄文時代からあるじゃん。  人は共同体(コミュニティ)を作ってさ。  男は狩り、女は家庭を守っていたんだよ」 「その考えが古いから、かっちゃんには彼女ができないんだよ。  できてもすぐに別れちゃう、女性に対する願望が強すぎるから」 「じゅんじゅんは剣道でも、それこそ対戦相手が男子でも。  勝てちゃう時があるもんね、強いし頼れるし」 「あのね夢ちゃん、これからは女も自立する時代なの。  家庭を守るだけなんて、そんなの無意味(ナンセンス)。  女もバリバリ働いて、性別に関係なく社会に貢献するの。  育休が昇級の妨げになるなら、私は子供なんていらない」  目を見開き、夢ちゃんを今にも食べてしまいそうな勢いで話すじゅんじゅん。  夢ちゃんの両手をギュッと握って、飛沫も飛んでいるかもしれない。 「いつまでも女は若さ、お茶汲み、コピー取りで資料の準備をする補佐役。  これじゃ本来の力を発揮できない、男より有能かもしれないのに」  営業事務をしてくれる女性のおかげでプレゼンが成功しても、自分の手柄と勘違いをする男性社員。  そんな事務員の代わりは幾らでもいると、退職へ追い込む男性上司。
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