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2023年・10月 最終週
中間考査も終わり、暑い秋が続いている。
父の言った通り、大して環境の変わらない世界ではある。
だが自分が未来から来たのだと思うと、失敗は怖くなくなった。
確かにミクは2023年で今を生きているが、現実だが現在ではない。
だから他人の人生のように楽しめた。
「次の三連休、予定ある」
表情が緩むのは夢ちゃんだ、いつの間にか仲良くしてくれている。
友達とは構えて作るものではなく、自然とできるものだった。
この時代に教えられた。
ないよ、とミクは白紙の手帳を見せる。
普段は携帯電話に内蔵された、スケジュールアプリで予定管理を行っているミクだが。
この高校では日中の携帯利用が、基本禁止されていた。
隠れて使用する生徒も散見したが。
この時代の通信速度が、やけに遅いと感じるミクだ。
待ってまで使いたい代物でもなく、本になった手書きの手帳を買っていた。
「文化の日の、ここ」
日本の休日は知らないので、白紙の三日を指差し確認。
ないね、と夢ちゃんは笑う。
都の父親は温泉地にマンションをひと部屋保有しており、バブルの名残りらしいのだが。
そこへ勉強をしに行くという、場所は熱川の海側だ。
かっちゃんたちも来るらしく、こちらは男子委員長室生の父が、同じく熱川の山側に一軒家を持っているそうだ。
どちらも親は前乗りする。
追い込みも集中勉強も必要のないミクだが、2023年へきた目的である山下の魅力はいまいちまだ解らない。
それを知るためにも参加する必要があった。
2049年への報告書は隠れて書けばいい、携帯だって未来へ通じるのだ。
ところで山下はどうだろう、同居人が参加して迷惑ではないか。
流動的な人間関係に慣れていないミクに、この時代の人付き合いは難しくもあった。
望みは掲示板に書き込む。
集まった人たちで一期一会のどんちゃん騒ぎ、用が済めばハイさよなら。
人数が必要ならまた募ればいい、プロ友達だって手配できるのだ。
だから夜を待ち聞いてみた。
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