2023年・10月 最終週

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「ミクが熱川に来ることについて、別に良くね?  行きたくないなら断ればいい、俺に聞くな」  あるがまま(リアル)な他人との会話は、例えお叱りを受けても新鮮だ。  ミクは目を見開く。 「私が考え過ぎだったね」  そそくさと自室へ戻ろうとする。 「みんな来てほしがっていたよ、楽しみにしている。  何か参加できない理由でもあるのか」  それが山下には見当もつかない。 「別にないよ」  今度こそ部屋に戻ろうとすると。 「毎晩、遅くまで何をやっているんだ」  遅くって、と聞き返す。恐らく一行日記のことだろう。 「おやすみって言ってから電気が消えるまで、少し時間があるっていうか。  不規則な、何か叩くみたいな音が聞こえるから」  壁が薄い! 思わずミクは仰け反った。 「煩かったのなら、ごめんね」  こう言い扉を閉めた、危なかった。バレたら重罪、強制送還だ。  すぐ扉が開き、山下が廊下に顔を出した。 「慣れない土地で大変だろうけど、何かあったら何でも言え。  悩み事なら聞くし、困り事だったとしても、解決できるかもしれない」  書く━━この場合、入力することでも発散にはなるだろう。  しかしもし誰かに打ち明けられたのならば、それはどんなに心強いことか。  これまでのミクは悩んだら、直でAIに質問していた。  その回答はとても単純(シンプル)で、王道━━つまり質問者が誰であれ同じ返しをした。  だがそれはミクだけじゃない、多くの若者の相談相手が未来ではAIだ。  誰かに心の内を話す、それも赤裸々に明かすだなんて!  親にすら、相談していたのは幼少期までだろう。  ドキドキするに決まっている、こんな経験は初めてだった。
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