2023年10月2日

1/4
前へ
/69ページ
次へ

2023年10月2日

 こちらでは四月に新学期が始まっていたので、ミクは転入生扱いとなった。  担任から紹介され続く。 「今日から、よろしくお願いします」  教室内を軽く見回し、ペコリとお辞儀した。  母校には様々な面白い生徒がいて、髪型や文化も多岐に渡っていた。  だからか申し訳ないのだが、ここの生徒は全員が大人し(いい子)そう。  みんなが似たり寄ったりに見えるし、馴染めるか心配だ。  彫りが浅いのは仕方ない、ミクも。  しかし髪の色はだいたい黒く、肩より長い生徒は女子も男子も縛っている。  スカートの長さは膝丈で、校内と外で短くしたり使い分ける。軍隊か。  母校にこれといった校則はなかった。  悪いことをすれば一発、校長室送りだったからだ。  登校日も少なくて、全部で何回みたいな緩い……要は単位を取ればいい。  結果重視だったから、学校だし制服は着用するが、その着こなし方は豊富だった。 「長谷川の席はそこ、山下の隣り」  家主の息子と偶然にも同じ組クラスで、隣りの席となった。  両親が今(2049年)でも思い出し笑いをする山下だ、お手並み拝見させてもらおうと、ミクは息巻き着席した。  がしかし、かったるい一限目の英語。  未来にいたつい昨日まで、家の外では日常茶飯事で英語を使っていた。 『一緒に住んでいるって、内緒だからな』  山下からメモが回ってくる、破いたノートに書かれていた。 『わかってる』  漢字がすぐ判らず素直に返した、家主の息子にご迷惑をかける気は更々ない。 『それとヒサはお前のこと、かなり気に入っているみたいだから。  よろしくな』  山下にはまだ、認められていないということか。  初日にお父さまが、折角の期間限定家族(ヒサちゃん命名)なのに苗字呼びも寂しいだろうと、名前で呼び合うことを提案していた。  協会も精神面の準備まではしてくれない、つまり自力で距離を縮めねばならないのだ。  ミクは軽く笑顔を返した。  集団で、それも終日授業を受けるのは初めてのミクだ。  未来でも文化系の科目は登校日に受講するが、授業中に学友(クラスメイト)と会話したい場合はチャットを使用する。  手書きだと自分の歪んだ文字がなんとも恥ずかしいが、先生の目を盗み、コソコソと回すのはスリリングだ。 『よろしくって? なにを』  よろしくのご挨拶は、初日に済ませてある。 『姉ちゃんを欲しがっていたんだよ、俺が雑だから。  (早く彼女を作れって)』  (括弧)内は消されていた。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加