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2023年10月2日
こちらでは四月に新学期が始まっていたので、ミクは転入生扱いとなった。
担任から紹介され続く。
「今日から、よろしくお願いします」
教室内を軽く見回し、ペコリとお辞儀した。
母校には様々な面白い生徒がいて、髪型や文化も多岐に渡っていた。
だからか申し訳ないのだが、ここの生徒は全員が大人しそう。
みんなが似たり寄ったりに見えるし、馴染めるか心配だ。
彫りが浅いのは仕方ない、ミクも。
しかし髪の色はだいたい黒く、肩より長い生徒は女子も男子も縛っている。
スカートの長さは膝丈で、校内と外で短くしたり使い分ける。軍隊か。
母校にこれといった校則はなかった。
悪いことをすれば一発、校長室送りだったからだ。
登校日も少なくて、全部で何回みたいな緩い……要は単位を取ればいい。
結果重視だったから、学校だし制服は着用するが、その着こなし方は豊富だった。
「長谷川の席はそこ、山下の隣り」
家主の息子と偶然にも同じ組クラスで、隣りの席となった。
両親が今(2049年)でも思い出し笑いをする山下だ、お手並み拝見させてもらおうと、ミクは息巻き着席した。
がしかし、かったるい一限目の英語。
未来にいたつい昨日まで、家の外では日常茶飯事で英語を使っていた。
『一緒に住んでいるって、内緒だからな』
山下からメモが回ってくる、破いたノートに書かれていた。
『わかってる』
漢字がすぐ判らず素直に返した、家主の息子にご迷惑をかける気は更々ない。
『それとヒサはお前のこと、かなり気に入っているみたいだから。
よろしくな』
山下にはまだ、認められていないということか。
初日にお父さまが、折角の期間限定家族(ヒサちゃん命名)なのに苗字呼びも寂しいだろうと、名前で呼び合うことを提案していた。
協会も精神面の準備まではしてくれない、つまり自力で距離を縮めねばならないのだ。
ミクは軽く笑顔を返した。
集団で、それも終日授業を受けるのは初めてのミクだ。
未来でも文化系の科目は登校日に受講するが、授業中に学友と会話したい場合はチャットを使用する。
手書きだと自分の歪んだ文字がなんとも恥ずかしいが、先生の目を盗み、コソコソと回すのはスリリングだ。
『よろしくって? なにを』
よろしくのご挨拶は、初日に済ませてある。
『姉ちゃんを欲しがっていたんだよ、俺が雑だから。
(早く彼女を作れって)』
(括弧)内は消されていた。
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