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K.うっかりネットスラングを返す。
「山下くん、転入生に校内のことを教えてげるのは、昼休みになさい。
今のここ読んで、訳して」
先生に指されてしまう。何人かは振り返り、ミクと山下を交互に見た。
あ、はい、と山下は教科書を持ち、立ち上がった。
「Who knows what will happen tomorrow?」
「意味は、答えて」
間髪入れず、先生の突っ込み。
「意味は、明日……誰。はぁ?」
見ていられないとばかり、ミクは立ち上がる。
「明日、何が起こるかは誰にも分からない」
「そうですね、直訳すると……山下くん、もう座っていいのよ」
貴方の番はもう終わりとばかり、ミクは既に座っている。
『英語、得意なのか』
懲りずにメモが回ってきた。
ミクは昨日までの時点で、こちらの高二に当たるグレード11の半分まで、履修を終えていた。
全ては時間旅行を終えた時、未来の自宅へ帰った後で、滑らかに元の生活に戻るための作戦だ。
『けっこうね』
結構とは強ち嘘でもないが、得意不得意の程度ではない。
環境がそれを強いたのだから、嫌でも苦手でも、英語を話すしかなかった。
日本をもっと知りたい、週一の日本人学校だけじゃ足りない。
アイデンティティは日本人なの!
そう心は叫び、今回与えられた日本での生活機会をとても楽しみにした。
しかし残念なことに、二限目の国語(日本語)は全然ついていけない始末。
何事も、予定調和とはいかないようだ。
幸いにも今(2023年)から十五年後に渡米した両親から教わった日本語が、問題なく通じたことは喜ばしい。
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