4人が本棚に入れています
本棚に追加
「私はガキって言うほどガキじゃな──あっ」
唸るように発された怒りは、長くは続かなかった。少女が何かに気付いたかように得心する。
そして、笑みを浮かべる。にやにやとした、笑みを。
「そっかぁ」
好奇の左目が、晃暉の嘗め回す。
「うっ……」
怒りから、好奇。唐突な感情の変化が、晃暉を戸惑わせる。
「な、何だよ」
「おじさんって」
意地の悪い笑みを無くさず、少女が言う。
「老いた人がタイプなんだね」
「誰がだ」
「ガキの裸に興味ないってことは、そういうことでしょ」
「何でそうなる」
「大丈夫大丈夫。人の性癖に文句はつけないから」
「人の話を聞け」
呆れ果てても、少女は好奇を失わない。増してすらいるかのように、晃暉に一心に注がれている。
「まず──」
強く否定しなければ。そう決意を固めて口を開いた晃暉の言葉は、続かなかった。
眼前に佇む少女の態度。自分の推測は、一片すら疑いを抱いていないと思わせる、自信に満ちた表情。
「いや、いい」
否定すればするほど、比例するように好奇は増していくだろう。あるいは、右から左へ受け流すだろう。
聞く耳を持たない。少女の性格を不本意ながら理解した晃暉は、その性格の人間への対処法として、諦めの吐息を漏らした。
「君と話していても疲れるだけだ。悪いが、もう帰らせてもらう」
「帰らせない」
体を翻すことすら叶わなかった。笑みを消した少女の低い、力強さのある声が、目的を達成するまで付き纏う響きを帯びている。
最初のコメントを投稿しよう!