橋での邂逅─1─

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「私はガキって言うほどガキじゃな──あっ」 唸るように発された怒りは、長くは続かなかった。少女が何かに気付いたかように得心する。 そして、笑みを浮かべる。にやにやとした、笑みを。 「そっかぁ」 好奇の左目が、晃暉の嘗め回す。 「うっ……」 怒りから、好奇。唐突な感情の変化が、晃暉を戸惑わせる。 「な、何だよ」 「おじさんって」 意地の悪い笑みを無くさず、少女が言う。 「老いた人がタイプなんだね」 「誰がだ」 「ガキの裸に興味ないってことは、そういうことでしょ」 「何でそうなる」 「大丈夫大丈夫。人の性癖に文句はつけないから」 「人の話を聞け」 呆れ果てても、少女は好奇を失わない。増してすらいるかのように、晃暉に一心に注がれている。 「まず──」 強く否定しなければ。そう決意を固めて口を開いた晃暉の言葉は、続かなかった。 眼前に佇む少女の態度。自分の推測は、一片すら疑いを抱いていないと思わせる、自信に満ちた表情。 「いや、いい」 否定すればするほど、比例するように好奇は増していくだろう。あるいは、右から左へ受け流すだろう。 聞く耳を持たない。少女の性格を不本意ながら理解した晃暉は、その性格の人間への対処法として、諦めの吐息を漏らした。 「君と話していても疲れるだけだ。悪いが、もう帰らせてもらう」 「帰らせない」 体を翻すことすら叶わなかった。笑みを消した少女の低い、力強さのある声が、目的を達成するまで付き纏う響きを帯びている。
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