橋での邂逅─1─

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「帰りたいんだったら、教えていって」 「言うつもりはない」 「私はそれを受け入れるつもりはない」 「ああ言えばこう言う、だな」 嘆きを吐きながら、晃暉は後頭部を掻いた。 「そういうところが、疲れるんだ」 「人を厄介者みたいに言わないで」 「みたいじゃなく、実際そうだ」 「初対面なのに足蹴にするなんて、おじさんって捻じ曲がってるね」 「君に言われたくない」 繰り広げられる言葉の応酬に、晃暉は辟易とした。 嫌気が差している。露骨に態度に表れている。それでも、少女の気迫は減少する気配がない。勢いが増していくばかりだ。 「だったら」 渋々といった体で、少女は口を動かした。 「おじさんが一方的に喋ってくれればいいよ。私は口を挟まない」 「何で君が妥協したみたいな──いや、してあげたみたいな言い方なんだ」 「現にそうだから」 毅然と、言い放つ。 「私がちょっと折れなきゃ、おじさんはいつまで経っても教えてくれないでしょ」 「ちょっとじゃなくて、全部折れ」 「それはない」 断言。心境に変化は決して訪れないと、明白に物語っている。 深い溜め息を吐き出す晃暉を前にして、決して揺らがない。 「言ったでしょ。おじさんは稀って」 サングラス越しの瞳を、瞬きすら忘れたかのような、決然とした左目が真っ直ぐ捉える。 「そんな人を逃がすほど、私の意志は脆くないから。それは、おじさんも分かってるでしょ?」 「君が強情な性格だということは、嫌というほど理解しているよ」 「じゃあ──」 「だが」 少女の言葉を遮るように、一際強く言い放つ。 「俺にも強情な一面があると、君なら理解してるんじゃないのか?」 「……」 沈黙。しかし、肯定が多分に含まれていた。
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