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無言の返答に、晃暉は微かな悦に入る。
「強情と強情の勝負なら、埒が明かん。それでも君は諦めないのだろうが、そんな君に構っていられるほど俺は暇じゃない。他を当たった方が有意義だぞ」
「じゃあ、その他を紹介して。元、警察関係者のおじさんなら、元殺人犯を知ってるでしょ」
「良い人がいたら紹介してみたいな、友人に頼む感じで言うな。そもそも、知っているだけで知り合いではない。そいつらは、大半は塀の中だ」
「じゃあやっぱり、おじさんしかいない」
「結局、そこに行き着くのか……」
隙を見出せても一瞬に過ぎず、補強すらされて、向き合わされている。
終わりの見えない応酬。深々と溜め息が止まらない晃暉の姿に、少女が悦に入る。
諦めを抱かせない。諦め、背を向けることもできない。囚われていないはずなのに、抜け出すことができない。
「はあっ……」
口許に弧を描いている少女が、晃暉の口から一際大きな、重たい溜め息を落とさせた。
意地と意地の衝突。勝敗はつかないと明言した晃暉を嘲笑うように、少女の笑みは、勝利を確信しているほど、自信に満ちている。晃暉の感情を飲み込んでしまうほど、少女は期待を向けている。
悄然とする晃暉の姿など目に映っていないかのよう。一心に注がれる、片目だけの眼差し。塞がれている、片方の目。
晃暉の視線は、改めて眼帯を捉えた。
「君の殺人願望は、その願望が原因か?」
「……」
少女が眼帯に軽く触れる。そして、微笑んだ。
「そう。おじさんは最初、厨二病とか疑ってたけど」
「……」
ばつが悪そうに、晃暉は僅かに目を逸らした。
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