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「今欲しいのは、おじさんが行った殺人の方法だけ」
「……」
「それも、ある程度は予想はできてる。おじさんの態度が一変したのは、自殺も殺人と同じって言った時から。つまり、おじさんの目の前で、誰かが自殺したってこと」
「傷口を、抉るな……」
「寄り添わないって宣言したよ」
「恐ろしいよ、君は……」
畏怖の念を抱いた晃暉の瞳には、皮肉も込められていた。口許に弧を描いて見つめ返す少女もまた、皮肉を宿していた。
満たされるまで尽きることのない欲求。折れない意志に、晃暉は力なく笑った。
「君の予想は合ってる。それでもう、いいだろ?」
「駄目。詳しく知りたい」
引き離そうとする気配を察知したのか、裾を握る面積が増える。
「どうやって自殺に追い込んだの?どうやって殺したの?」
「俺が、望んだような、言い方をするな……」
言葉に、無念が重く乗っていた。いや、言葉だけではない。晃暉の体に纏わり付くように、漂っていた。
囚われている。精神を破壊している。真横にいる少女にも、痛切に伝わっているだろう。それでも、少女の手が裾から離れることはなかった。
「……」
左側。少女に、裾に、おもむろに目を転じた晃暉は再び、それでいて痛々しく、笑った。
「離してくれ」
「詳細」
「君は、俺を殺す気か」
「殺しに価値があるのなら、迷わず殺すよ。苦しむ殺し方を得られるし」
「殺人鬼にでも、なるつもりか」
「あいつを殺せるのなら、何十人でも何百人でも殺すよ。自分だって、殺せる覚悟があるんだから」
殺人願望。自殺願望。片目から放たれる殺意に、偽りはない。少女は必ず、誰かを殺す。復讐を果たす。そう予見させるほど、狂気を孕んでいる。
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