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「ひとまず──」 閉じようとする力。押し返している力。門扉の攻防。雄貴は、門扉に手を置いた。 「兄さん。これは止めようか」 「おい──」 「理由は二つ」 不服を遮り、門扉を開いた。狭められていた隙間が広がっていく。少女は、僅かに安堵した。 「……」 言葉による不服から、表情による不服に変えた晃暉を、雄貴は微笑を浮かべて見返した。柔和に、口を動かしていく。 「一つ。どんな理由があったとしても、暴力はよくない。それも、未成年の女の子に対して」 「未成年?」 怪訝に、過剰に、少女が眉根を寄せる。 「私、二十歳過ぎてるんだけど」 「それは、申し訳ない」 躊躇うことなく、少女としっかりと目を合わせて、雄貴は謝罪を口にした。 「暗いせいでちゃんと容姿が確認できたわけじゃなくて、第一印象で幼いって思ってしまったのを、未成年だと勘違いしてしまったようだ。本当に、申し訳ない」 「まあ……」 誠心誠意、自分の非を認める雄貴に、少女は不満の行き場を無くした。直視に耐え難いかのように、困惑気味に目が逸れる。 「童顔だって、よく言われるから」 「そうだったとしても、勘違いしてしまった俺が悪い。俺は、初めから間違っていたんだ。年齢に関わらず、女の子──女性に対しての暴力はいけないと、そう言えばよかった。不快な思いをさせて、申し訳ない」 「……」 誠実な雄貴の態度が、少女の困惑を深めていく。放たれる悪態もなく、寝静まるように影を潜める。 それでも、少女を見つめる雄貴の瞳は、自責の念に囚われていた。
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