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「こいつを中に入れたら、居座るぞ」 「だからって、ここで白熱した口論を繰り広げるわけにはいかないでしょ」 「お前はこいつの目的を知らないから、簡単に話を進められるんだ」 「目的?」 門扉を抜けようと足を動かした少女が、雄貴に問われ、薄く笑む。 「私は、人を殺したいと思ってる」 「それは……」 少女の告白は、雄貴を戸惑わせ、開放を維持していた力を失わせた。晃暉は、その一瞬の隙を突いた。 力強く、大きな音を立てて、門を閉ざす。騒音が耳に届いていないのか、雄貴は目くじらを立てなかった。立ち入りを拒まれ、口を尖らせる少女を、呆然と見つめていた。 「殺人願望……」 言葉の意味を理解するように、しかし到底理解はできないとばかりに、小さく呟く。 「穏やか、じゃないね。本気なのかな」 「初対面の人に冗談を言うほど、私は社交的じゃない。あなたのお兄さんって、人を殺したことがあるんでしょ?」 「……っ!」 愕然。雄貴は咄嗟に兄を見た。ばつが悪そうに、晃暉は目を合わせようとはしなかった。 面食らう雄貴。居た堪れない晃暉。二人に構わず、少女は続ける。 「その時の殺害方法の詳細を知りたいの。参考にしたいから。それが、私の目的」 「兄さん……」 「口が滑ったんだ」 弁明と後悔が、忌々しげに吐き出される。 「あまりにもしつこかったんでな。それで離れられると思ったんだが、まさか興味を持つとは思わないだろ」 「君は……」 消失しない驚きを、少女に向ける。 「兄さんとは、初対面だよね」 「ええ」 「初対面の人の言葉を、真に受けたのかい?」 「真に受けるような言い方をしてたから。その時の痛みとか苦しみが、全身に甦ってたし」 「その上で、聞き出そうとしてるのか?」 「自重したら、永遠に聞き出せないでしょ」 「なるほど。一理はあるね」 「受け入れんな」 雄貴に苦言を呈しながら、憎々しげに少女を睨む。
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