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「言ったろ。性悪だって」
「悪魔になるって宣言したのに、清廉なわけないでしょ」
「待って」
顔を合わせては睨み合う二人。間に割って入るように、雄貴は二人の顔の前に手の平を翳した。
「俺は兄さんみたいに、彼女を性悪だなんて思っていないけど、一筋縄ではいかない相手かもしれないってのは分かった。だから」
翳した手を、門扉に置いた。キイィー。再び、静かに開かれていく。
「双方が納得のいく結論を出すには、やっぱり中で」
「雄貴……」
開放された扉に、嘆息した。閉鎖を試みるために、手を伸ばす。
「お前はこいつの目的を知っても尚、入れようとするのか」
「尚更だよ」
伸びた腕を拒むように、雄貴は開いた扉を手で支えた。
「彼女が目的を語ったのは、俺が尋ねたから。それまでは兄さんと、入る入らせないの押し問答をしていたよね」
「それが?」
「俺が様子を見る来る前後に、彼女の目的を示す単語は聞こえてこなかったけど、それは兄さんと出会ってから散々問い質したから。でも兄さんは応じなかった。無視でも決め込んで帰ろうとする兄さんに、彼女は諦めきれずに、追いかけた。問い掛けても応じないと分かっているから、彼女は、後を追うしかなかった」
「……」
「そして、今。押し問答は入る入らせないだけど、俺が尋ねたから──いや、尋ねなくても、彼女はだったらここでって、詳細を再び問い質しただろう。ガシャガシャと響く音と、聞こえてくる彼女の願望は、近所の目を白くさせることは間違いない。それでもいいの?」
「……」
伸びてる腕が、空を掴む。抗うように五指に力が入り、小刻みに震える。晃暉の表情が、苦悶に染まる。
近所迷惑。非難の目。想像に難くない雄貴の推測は、晃暉から徐々に抵抗を奪っていった。
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