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第1話 ミミルはパンが好き
だいじょうぶ
だいじょうぶ
そう口の中で何度も呟きながら、一人の少女が今日眠るところを探して、壊れた街を歩いていました。
歳の頃は10歳くらい、でも、もっと小さくも見えます。
身なりはボロボロ。とても幸せそうとは言えません。ところどころかぎさきのできた赤いワンピースは、薄汚れて灰色に近くなっています。肩からかけたポーチは、細い紐が切れそう。こんなになるまで着なくても、とっくに新しいものをママかパパにねだったって、バチは当たらないのにね。
少女は短い両足を交互に出して、重い体を引きずるようにしてヨタヨタと進んでいきます。
どうやら一人ぼっちのようです。まわりに面倒を見てやっているような大人の姿はありません。
お日さまはもう西の空から落ちていくところ。もうじき真っ暗になってしまうでしょう。
最後まで地上に残っていたわずかな赤い光も、暗い灰色の街の片隅に隠れるようにして消えていきました。どこかで鳴いているカラスの声が、カアカアと物悲しく響きます。
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