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————大丈夫かな。
私は今更のように心配になった。どうしよう。得体の知れないジャムを入れて、器が溶けてしまったら。私のせいで大事な陶磁器が一個おじゃんになったら、どうしよう。
でも、その不安は杞憂だった。
器はなんともなかった。
私はホッと一安心して、そうしてふと、気がついた。
雪が降っている。
いつの間にか、チラチラ舞っていた。小さな世界の妖精が、くるくると落ちてくる。
真っ白な雪が、たんぽぽの綿毛みたいに柔らかく、シロツメクサの花畑のように一面に、地面を覆い始めている。
————銀の星だ。
私は思った。
夜にいつも眺めている、銀の星たち。みんながこうして太陽の出ている時間、冷たい雪の結晶となって舞い降りてきてくれているんだ。
すっかり嬉しくなった私は、温かいおやつを抱えたまま、パッと庭に出てみた。
ヒュウヒュウ。頬を切るような風が冷たかった。
足元が霜がザクザク言う代わりに、雪にズボッとハマった。
屋根が張り出しているおかげであんまり積もっていなかったけれど、それでも嬉しかった。
クツクツと、私は笑う。
そして……その時だった。
「……あっ。」
私の手の中の器に異変が起こったのは。フレークの浮いたホットミルクが美しい泉のように湧き出して、魔法のようにまっすぐな小川を私の前に作ったのだ。
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