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玄米入りのコーンフレーク。
この袋を見るたびに、子供の頃のほろ苦い記憶を思い出す。
あれは、確か私が八歳の時だった。
兄が、よく玄米入りのコーンフレークを買ってきた。彼はホットミルクにドザザッと混ぜ、蜂蜜を垂らしてそれをおやつに食べるのが好きだったのだ。
雲はうすい墨色で空気は青く、地面は一面真っ白な霜。そんな凍りつくような冬の日に、私はふっと、兄の真似をしてみようと思いついた。
お小遣いを握りしめて、スーパーマーケットへ。三十分商品棚の迷路で迷いに迷った後で、私は無事に目当ての袋を購入することができた。
白いヒヨコのマークがついている、可愛らしい袋だった。
私はビリッと豪快に袋を破り、白い陶磁器にフレークをあけた。ホクホク顔で小鍋で温めたホットミルクをジョボジョボ注いだ後、さて蜂蜜を垂らそうかと私は棚に手を伸ばした。
その時だった。
なんとなく。なんとなくとしか言いようのない感覚で、私はその隣のジャムに気を惹かれたのだ。
それは銀色の満月のような、怪しげな光を発する壺だった。
表面の紋様は水玉のようで、少し違う。見る角度を変えるたびに見えるものが蜃気楼の如く揺らぐ。
私は首を傾げながら、銀のスプーンでその中身を救って垂らした。
ポトン、と。
銀色のジャムがホットミルクフレークの中へ落とされた。
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